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結晶

 

 

あの日 僕は仲間に殺されそうになった

その頃 まだ 結晶は祭壇の真ん中に在った

裏切られ 追い掛けられて 僕は逃げた

敵でも同じ宝石の民 助けを求めて 結晶に走った

 

僕は宝石の民 家族は小国の民

だから同胞から化け物と罵られ 虐げられた

僕が僕である理由なんて

僕にも わからないのに……

 

友だちなんていなかった

家族まで殺されて

誰が敵で 誰が味方かなんて考えたけど

僕の敵は 目の前の全員で 見方は ひとりも

 

いない

 

すべてを否定されて こんな世界が大嫌いで

それでも何故か僕は まだ死にたくなかった

殺されたくなかった 怖かった

何もかも終わればよかったのに 僕は

 

 

だから内戦は終わった 争う相手は消滅した

僕が人間だと思っていた小国の民は 滅んだ

この国に残ったのは傷付いた宝石の民だけ

そして僕は愚かにも 不老不死を手に入れていた

 

けれどこの国は そう長くは保たなかった

衰弱した宝石の民も徐々に数を減らし

この国は遂に 潰えた……

それでも 僕だけは残った……

 

どこまで歩いても あるのは孤独だけだった

はじめからそうなのに どうして生きたのだろう?

自分を恨んで 幾度も死のうとした... だけど

僕は死ぬことも出来ない化け物

 

黒い血痕の残る祭壇で 夜空の星を映しながら

煌めき輝く結晶はまるで 満月の様な笑みを湛え

そして僕を唆し 受け入れてくれた

“友だちってこういうものなのかな?”

 

遣ってはいけないことをしたのかもしれない

僕はそして 神になった...

空白を埋める 神になった...

結晶は揺らいで 微笑んだ……

 

こうして僕の世界が完成した

宝石の民と空白の国──

 

本当は唯の 真っ白...

 

 

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