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孔雀堂

 


場所は可変 現在は横濱 中華街の路地裏に在るよ

或る地点から左に進み 突き当たりを左へ...
緋色の夕陽が東へ向かう 影は左へ伸びる
其れでも尚 左へ... 左へ... 左へ...

平衡感覚を失った頃に『孔雀堂』は現れて
錆び付いた看板が 右下がりで出迎える
重い扉は軋んで 不快が耳を劈いて... 君も
そっと意識が遠退き 此方に落ちてくるよ

此処には 世界を切り取った 君の為の古書が在る


破滅を刻んだ 深紅の花束
執拗な電話が悲劇を招いた 豪雨の夜

もう一度... もう一度... と縋り付いたのに
自ら過去を裏切っては 生と死を繰り返す

愛していた... 愛しすぎていた?
愛している... 此の血は毒へと変わっていた

一方で 閉鎖的な感情は 悲しみを育て上げ
何時しか涙は花となり 常春の庭に咲く

記憶の不死を手に入れた... 筈なのに 結局...
全てが有限の世界では 宝石だけが輝ける幻想

明けない夜に 終わらない物語に 疲弊した
首の無い道化師が嗤う... 其の画布は狭かろう……

厳冬でなくとも都会は寒く 一秒が長くて短い
孤独を紛らす「永遠」さえ打ち砕き救いを絶った

不運に苛まれた女は 最期に幸福を見付ける
其れは真実の幸福 最後に残された人間性

何時の世も人間は破滅を渇望し 未来も希求する
全てが思い通りに進まぬ 神の予定調和

何もかもを識ってしまっても 求め続ける力
創造とは 肯定と否定を抱き続ける行為である

……そんな呪いを集めて 愛でているの


貴女の好みは 何れか知ら?

 

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