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ヨコハマ☆メリィ

 

 

 

白い顔で矜持を守り 白い服で高貴さを纏った

私は安い娼婦じゃないわ

あんな子達と一緒にしないで

誰とでも寝る程 惨めじゃないわ

 

私は... 私は……?

 

自己防衛の意地は 貫こうとも

自尊心とは言えないのだろう……

本当は……

 

迫りくる時代の波を恐れながら 行く宛もなく

今日も沈む夕陽を背に 彷徨い歩いた

大好きだったノスタルジィが塗り潰された街

 

華やかな乙女たちが 髪を切って歩み始めた時代

好きだった……

私にも 自由があったから

 

私は歩いた 煉瓦の道を

大好きの欠片を遺す 此の横濱を

 

必死に生きたのに 生きるためだけに生きたのに...

私には何が残っているのだろう?

 

貼り付けられた様な 取って付けた街並み

思い出を探して歩く 其れは多分... 惨め

 

他人に聖女と言われても 癒しを求められても

私は唯の人間なのに 一人の人間なのに

 

 

負の感情に押し潰されて 迷い混んだ路地裏

路地裏なら熟知しているつもりでいた

だけど此処は まるで知らない街の裏だった

 

押し寄せる夜に震えながら 歩いた

何処に向かっているのか 向かうべきなのか

解らない儘 足の向く方へ……

 

理由を失して 生きるだけの私に

手を差し伸べたのは 緋い瞳の女

記憶を摩り替えて 新たに生きるのは

私が私でなくなるということ

……だけれども

私が私でなくなった事実も忘れてしまえば

何の柵も無く 何の感情も無く

普通に フツーに

生きられるではないか

 

目が覚めると 私は一番キレイだった頃の私で

横濱の街は モダンな雰囲気を演出しつつ

未来になっていた!

 

ココは私の知っている 横濱ではなかったけれど

取って付けた様なモダンも 偽りの情緒も

もう どうでも良くなっていた

 

平和ならば... 金があれば...

こういう風に生きることが 幸せだろう

 

私が戻りたかったのは あの街並みじゃなくて

私が私の人生を選べる そんな時代だったのだわ

 

刹那 スクバに突っ込んだままの ケータイが鳴った

親友からの着信

今日は合コンの日だったんだ!

 

私は慌てて家を飛び出た

オートロック 背後で扉に鍵が掛かった

 

昨日の男子も悪くなかったな

だけどもっと 遊んでもいいじゃん

味見したっていいじゃん

 

まだ脳裏に微かに残る記憶

 

今でもあの街を 誰かが歩いているのだろう

白い顔の 白い夫人が

今でも誰かが彼女を 港の聖女と称えているのだろう

私じゃない 誰かが……

 

凛として美しい人

何時も美しかった人

左様なら!!

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