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誘拐

 

 

ひだまりの図書館 暖かい午後

微睡みに包まれた世界から 私は旅を始める

 

本を読めば 何もかもが解ると思っていた

こんな小さな国 大好きだけどバカにしていた

本の中には 世界や物語があって その中に

生きるように迷い込むことが 私の全部だった

 

 

揺れる... 揺られる……

長い夢から醒めたら 新しい夢が始まった

小さな飛行艇は私を乗せて 飛び... 跳ねる...

そのうちに気が付いた これは夢じゃないんだと

 

見える... 見えない……

町を離れ 知らない場所へ向かっているようで

脳裡に浮かび上がったのは 最近聞いた噂話

予感は確信に変わった これがあの誘拐事件だと

 

何も知らなかった 知った気になっていた

そんな自分を恥じたり 憤ったりした

いまも同じだった 新しい本に出逢ったような

新しい世界が広がっていた これが私の世界

 

この世界は私の知らない秘密で溢れている

 

知らないまま 考えもしないまま過ぎていく毎日

時間は止まらない 世界も止まらない

今日も 時間は流れる 時計は唯 回り続ける 

私も唯 走り続ける……

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