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Cyan
~Lunatic Venus Op.1 “Ruin”~
明けない夜が在って、私は独り、月を眺めてた。星明かりに煌めく冷たい海に身を浸していれば、何時か貴方が迎えに来てくれる。そんな幻想に本気になって。
私は深海の魚が吐いた、小さな泡のひとつ。
自ら歩く意思も脚も持たなければ、声も言葉も持っていない。貴方に会いに行く術も無ければ、貴方を呼ぶ術も無い。
それなのに、信じてた。
ある時、魔物が私に近付いて、耳元で囁いた。
理解出来ない言語。その響きは禍々しく、私は何の躊躇いも無く、魔物を殺した。
夜は深まり、けれど朝は遠退く。溜め息に呼び寄せられた魔物が、私に何かを運んでくる。魔物は甦り、何度も何度も運んでくる。
それは小さな命。私はその重みに堪えられなくて、また捻り潰した。
潮が満ち、潮が引き、また潮が満ちる。
私がそれらを何度殺そうと、闇は深まるばかりで、朝は来ない。そんなことは、もう知っていた。
呪い。これが呪いならば、過ちはあまりに遠い。私には償うことなど出来ない。
彼女の気が済むまで、私は私に運ばれてくる命の芽を摘み続けた。
貴方の望みは何なのですか。貴方が迎えに来てくれるまで、私は彼女の呪いに突き動かされる。
私達はこの世に生まれてしまった瞬間から、呪いを背負っている。総ては罪故に。
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