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My Dream
~Lunatic Venus Op.1 “Ruin”~

 まるで夢のような日々でした。いつまでも終わらない空々しい記憶が、私に見せるのです。本当に存在しているのか、していないのか、判らないもの。それが、あたかも私の求めているものであるかのように。

 

──仄暗く、長い廊下。逃げ惑うひとつの影。追い掛ける冷たい風。微かに潮の香りがした。

 

 

 私が私を赦すことなど、到底出来ないことなのです。世界が私を拒絶するのですから、私もまた、世界を受け入れることなど出来ません。誰にも理解されないのですから、私も同じように、誰も理解したくありません。誰ひとり、赦せないのです。この世に生きるすべてのものが、等しく、憎い……。

 

──ひとり分の足音、鳴り響く鐘の音。秒針と鼓動が重なり、また離れていく。

 

 

 夜は人を眠らせ、幻想という罠で奈落へ突き落とします。狂気じみた発想と妄想が繰り返された挙句、本能と衝動が、このちっぽけな体躯を暗闇へと突き動かしていくのです。

この私を誰が止められましょうか。私は操り人形。私は演者。私は脚本家。私はこの夢の主人公。

 

──消えていく悲鳴。何かの滴る音が徐々に遠ざかる。近付いてくるのは、悲しい歌声。

 

 

 蒼い光が、揺らめいていました。窓から差し込む月明かりが、私の影に語り掛けます。

  これは夢、私の夢。もうひとりの私が私を消す前に、早く消してしまわなければならないと。

 

──月明かりに刃物と液体が煌めき、甘い香りが漂う。そのとき、鏡の割れた音がした。

 

 

 夢が醒めるのは、あまりに辛く寂しいことです。私はもう一度、目を瞑りました。何度、目を覚ますことになっても、私はその度に目を瞑るでしょう。

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